オフショア開発の課題とは。管理手法と成功事例から学ぶリアルな対策
- FuvaBrain
- 7月30日
- 読了時間: 14分
更新日:2025年7月30日

オフショア開発は、開発コストの削減やIT人材不足の解消といった観点から、多くの企業にとって重要な戦略となっています。一方で、国境を越えた開発には、言語や文化の違い、セキュリティ、品質管理など、オフショア開発特有の課題も多く存在します。
この記事では、こうしたリスクに対する理解を深めることを目的に、実際の失敗事例やよくあるトラブル、さらに成功事例に基づいた具体的な対策を紹介し、オフショア開発の成果を最大化するための実践的なヒントをお届けします。
目次
オフショアリング(offshoring)とは
オフショアとオンショアの違い
オフショアとアウトソーシングの違い
オフショア開発のメリット・デメリット
オフショア開発の最新動向
要件定義の認識違いで仕様の大幅なズレが発生
納期遅延が頻発し、プロジェクトが停止に
セキュリティポリシーの違いから情報漏洩
コミュニケーション不足・言語の壁
品質のばらつき・レビュー体制の不備
タイムゾーンの違いによるタイムラグ
文化・ビジネスマナーの違い
セキュリティや情報管理体制の甘さ
実際に効果のあったプロジェクト管理手法
オフショア先との信頼関係構築の工夫
テスト・検証プロセスの見える化
明確な要件定義・設計書の作成
定期的な進捗報告とレビュー体制
セキュリティ要件の事前提示と契約化
翻訳支援・バイリンガルPMの配置
オフショア管理に『Eye“247” Work Smart Cloud』
PC操作ログによる稼働時間の可視化
情報漏洩のリスクを減らす
グローバル対応の労務管理支援
コミュニケーション不足の補完
■オフショア開発とは
オフショア開発とは、自国ではなく海外にある企業や子会社にソフトウェア開発を委託・移管することを指します。日本においては、エンジニア不足やコスト削減といった課題を背景に、多くの企業がオフショア開発を導入しています。特に東南アジアや南アジアの国々は、人件費の安さや技術力の高さで注目されていますが、その一方で言語や文化、セキュリティの違いが新たな課題を生むことも少なくありません。
オフショアリング(offshoring)とは
オフショア開発の正式名称は、オフショアリング開発と言います。オフショアリング(offshoring)とは、企業が自国以外の海外に業務を委託または移転することを指します。特にIT分野では、開発コストの削減や人材不足の解消を目的に、海外の開発拠点にシステム開発業務を委託するケースが一般的です。
オフショアとオンショアの違い
オフショア(offshore)とオンショア(onshore)は、業務委託先の地理的な違いを表す用語です。
オフショアは、国境を越えて他国へ業務を依頼することを指します。これに対しオンショアは、同じ国内で業務委託を行うことを指すのが大きな違いです。
また、オンショアは言語や文化、時差の壁が少なく、コミュニケーションや管理が比較的容易ですが、コスト面ではオフショアに劣る場合が多いです。一方、オフショアはコスト削減や人材確保のメリットがある反面、品質管理や進捗管理、コミュニケーションの難しさなど独自の課題が発生します。
項目 | オフショア | オンショア |
---|---|---|
委託先 | 海外 | 国内 |
コスト | 低い傾向 | 高い傾向 |
管理 | 難易度が高い | 難易度が低い |
オフショアとアウトソーシングの違い
オフショアとアウトソーシングは混同されがちですが、厳密には異なる概念です。
アウトソーシングは、業務の外部委託全般を意味し、国内外を問いません。一方、オフショアは地理的に海外へ業務を移す行為に限定されます。つまり、オフショアはアウトソーシングの一種であり、特にコスト削減や人材確保を目的とし、海外に業務を委託する場合に使われます。
項目 | オフショア | アウトソーシング |
---|---|---|
委託先 | 海外限定 | 国内外問わず |
目的 | コスト削減・人材確保 | 業務効率化・専門性活用 |
オフショア開発のメリット・デメリット
オフショア開発には、コスト削減や人材確保といった多くのメリットがある一方で、いくつかの注意すべきデメリットも存在します。以下にその主な点を整理します。
オフショア開発のメリット | オフショア開発のデメリット |
---|---|
開発コストの大幅な削減が可能(人件費の安い地域を活用) | 言語・文化の違いによる意思疎通の難しさ |
日本では確保が難しいエンジニアのリソースを確保できる | 品質管理や納期のコントロールが困難になりやすい |
24時間開発体制が実現できる(時差の活用) | セキュリティや情報管理のルールに差がある |
特定分野に強い外部人材を柔軟に活用できる | チームとしての一体感が生まれにくい |
オフショア開発の最新動向
オフショア開発.comが発行した「オフショア開発白書2024年版」では、オフショア開発を発注した企業に対し、「オフショア開発企業に感じた課題」についてアンケートを実施しました。
オフショア開発企業における課題に関して、「コミュニケーション力」と答えた企業が最も多く、次点で「品質管理」が続く結果になりました。

また、「国内の開発企業に感じている課題」についてもアンケート調査を行ったところ、課題は「価格」や「リソース調達」に集中しており、人材不足による単価高騰が顕著に表れています。
※出典:オフショア開発.com「オフショア開発白書2024年版」
■オフショア開発で実際にあった失敗事例
海外との開発連携には、コストやリソース面の利点がある一方で、現場では想定外のトラブルも多く報告されています。
ここでは、実際のオフショア開発で起きた失敗事例を取り上げ、その背景や教訓を整理します。こうした実例を通じて、予防策や管理の改善点を見出すことができます。
要件定義の認識違いで仕様の大幅なズレが発生
日本側とオフショア開発先の間で要件定義の認識にズレが生じ、完成したシステムが期待した仕様と大きく異なってしまうケースは少なくありません。
言語や文化の違い、確認プロセスの不足、事前に詳細な要件定義書を共有していなかったことが主な原因です。このようなズレは、追加の修正コストや納期遅延を招き、最悪の場合はプロジェクトの中止に至ることもあります。丁寧なコミュニケーションと、双方の理解度を確認する仕組みが不可欠です。
納期遅延が頻発し、プロジェクトが停止に
進捗報告が不十分だったため、納期が守られず、品質も確保できずにプロジェクトが途中で中断された例もあります。進捗管理の甘さや、現地スタッフの離職、タイムゾーンの違いによる連絡遅延などが原因です。進捗の可視化や定期的なレビュー、リスク管理体制の強化が重要です。
セキュリティポリシーの違いから情報漏洩
日本とオフショア開発先のセキュリティポリシーや情報管理体制の違いが原因で、機密情報の漏洩や不正アクセスが発生した事例もあります。特に、現地の法規制やITリテラシーの違いがトラブルの温床となることが多いです。情報漏洩は企業の信用失墜や損害賠償リスクにも直結するため、セキュリティ要件の明確化と徹底した管理が求められます。
■オフショア開発でよくある課題5選

オフショア開発は多くの企業にとって魅力的な選択肢ですが、実際には特有の課題が数多く存在します。現場で頻繁に報告される典型的な課題は以下の5つです。
コミュニケーション不足・言語の壁
品質のばらつき・レビュー体制の不備
タイムゾーンの違いによるタイムラグ
文化・ビジネスマナーの違い
セキュリティや情報管理体制の甘さ
ここでは、上記の課題の背景や影響を具体的に解説します。これらの課題をあらかじめ理解しておくことで、トラブルを未然に防ぎ、より円滑な開発体制の構築につなげることができます。
コミュニケーション不足・言語の壁
オフショア開発で最も多い課題が、コミュニケーション不足や言語の壁です。日本語でのやり取りが難しく、英語や現地語を通じたやり取りを行うため、細かなニュアンスや意図が伝わりにくくなり、誤解が生じやすくなります。その結果、要件の誤解や認識違いが発生しやすく、プロジェクトの品質や進捗に大きな影響を及ぼします。定期的なミーティングやチャットツールの活用、通訳の配置など、コミュニケーション強化策が不可欠です。
品質のばらつき・レビュー体制の不備
オフショア開発では、開発メンバーのスキルや経験にばらつきがあり、品質の均一化が難しいという課題があります。また、レビュー体制が不十分だと、バグや仕様漏れが見逃されやすくなり、エラーが量産される結果につながります。日本側で品質保証プロセスの一元化が必要です。
タイムゾーンの違いによるタイムラグ
オフショア開発では、時差によるタイムラグがコミュニケーションや進捗管理の障害となります。日本とアジア圏では数時間、欧米との開発では10時間以上の時差が生じることもあり、日本と開発先で5〜8時間程度の時差があると、即時対応が難しくなります。やり取りのテンポが遅くなると、意思決定のスピードにも影響を与えます。タイムゾーンを考慮したスケジュール設計や、非同期コミュニケーションの工夫が必要です。
文化・ビジネスマナーの違い
指示待ち文化やYESと言いつつ実行しないなど、国による仕事観の違いがあります。オフショア開発では、国や地域ごとの文化や仕事観の違いが、プロジェクト運営に影響を与えることがあります。たとえば、報告・連絡・相談の頻度や、指示の受け止め方、納期や品質に対する価値観などが異なるため、誤解や摩擦が生じやすいです。日本特有の「察する」文化は通じにくく、明文化された指示が必要です。
セキュリティや情報管理体制の甘さ
日本では当たり前のセキュリティ基準が、オフショア開発先では適用されていないこともあります。現地のセキュリティ意識や情報管理体制が日本と異なる場合が多く、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まります。特に、個人情報や機密情報を扱うプロジェクトでは、現地の法規制やITリテラシーの違いがトラブルの原因となります。契約段階から情報管理の詳細ルールまで取り決めておくことが不可欠です。
■成功事例に学ぶオフショア開発のリアルな対策
オフショア開発は数多くの課題を抱える一方で、適切な対策とマネジメントにより成功へと導いた事例も多数存在します。
ここでは、実際に成果を上げた企業の取り組みを取り上げ、明日から活用できる具体策を紹介します。
実際に効果のあったプロジェクト管理手法
成功したオフショア開発プロジェクトの一例として、日本企業A社では、アジャイル開発を取り入れ、毎週のスプリントレビューを実施していました。各スプリントの終了時に進捗と課題を丁寧に確認し、フィードバックをすぐに反映することで、品質を保ちながら納期を厳守する体制を築いています。
さらに、進捗管理ツールやタスク管理ツールを活用し、タスクの状況を見える形で共有しました。それにより、認識のずれや品質上の問題が起きるのを未然に防ぐ仕組みを整備しました。
オフショア先との信頼関係構築の工夫
オフショア開発先との信頼関係を構築するためには、業務上の指示や報告だけでなく、現地チームとの双方向のコミュニケーションや、成果を公平に評価する姿勢が重要です。
企業B社では、年1回の現地訪問と定期的なオンラインミーティングを設けることで、信頼関係とモチベーションの維持に成功しました。現地リーダーを巻き込んだ意思決定や、成功体験の共有によって、責任感や自発性を育み、チームのモチベーション向上とエンゲージメント強化を実現しました。
テスト・検証プロセスの見える化
品質を保つためには、テストや検証の進み具合が見えるようにすることが大切です。企業C社では、開発を始めた段階からテストの計画や確認項目をチーム全体で共有し、専用のツールを使って進行状況を管理しています。作業の進み具合や問題点をその場で把握できる体制を整えたことで、最後の段階で不具合が起きないようにしています。また、日本のチームと海外チームで同じテスト基準を使い、定期的に確認や話し合いを行うことで、品質に対する意識を統一し、改善を続けることができています。
■失敗しないためのオフショア開発の管理方法
オフショア開発を成功させるためには、課題の発生を未然に防ぐための管理体制が不可欠です。特に、要件の共有方法、進捗管理、セキュリティ体制、言語・文化のギャップへの対応など、計画段階から明確な指針とルールを整備することが鍵となります。
ここでは、現場で実践できる具体的な管理方法について解説します。
明確な要件定義・設計書の作成
要件定義や設計書は、仕様の曖昧さを残さず、誰が見ても理解できるドキュメントを整備します。画像や業務フロー図も併用して共有し、共通認識を持たせることが重要です。また、要件の変更が発生した場合は、速やかにドキュメントを更新し、関係者全員に共有することが重要です。
定期的な進捗報告とレビュー体制
進捗状況を定期的に報告し、レビューを行うことで、問題の早期発見と解決が可能になります。週次・月次の定例会議や、マイルストーンごとのレビューを設けることで、プロジェクトの透明性と信頼性を高めることができます。また、進捗管理ツールを活用し、日本側がレビュー体制を主導することで品質を担保できます。
セキュリティ要件の事前提示と契約化
セキュリティ対策は、オフショア開発において特に重要なポイントです。セキュリティポリシーやデータ取扱ルールを契約書に明文化し、違反時の罰則規定も明示することで抑止力が働きます。また、定期的な監査やセキュリティ教育を実施し、リスクを最小限に抑える体制を整えましょう。
翻訳支援・バイリンガルPMの配置
言語ギャップを埋めるために、翻訳支援ツールの活用や、バイリンガルのプロジェクトマネージャー(PM)の配置が有効です。専門用語や業界特有の表現も正確に伝えることができ、コミュニケーションの円滑化、品質向上に直結します。
■オフショア管理に『Eye“247” Work Smart Cloud』
『Eye“247” Work Smart Cloud』は、オフショア開発における作業内容の可視化に最適なクラウド型PC操作ログ管理ツールです。遠隔地のチームの適切な勤怠管理や情報漏洩リスクの低減にも寄与します。オフショア開発の課題解決に向けて、こうしたITツールの導入を積極的に検討しましょう。
PC操作ログによる稼働時間の可視化
『Eye“247” Work Smart Cloud』では、PCの操作ログを詳細に記録することで、作業の開始・終了時刻や使用アプリケーションの履歴などが把握できます。これにより、遠隔地にいるメンバーの業務実態を見える化し、マネジメントの精度を向上させることが可能です。
情報漏洩のリスクを減らす
『Eye“247” Work Smart Cloud』は、日常的にデータを監視・分析することで、内部不正や情報漏洩のリスクを減らすことができます。たとえば、認められていないUSBデバイスを使用した場合には、管理者にアラート通知が飛ぶので、データの持ち出しリスクを減らすことができます。
また、PC操作履歴、ファイル操作履歴、印刷履歴、禁止ソフトウェア使用履歴、Wi-Fi接続履歴などのログを確認することで、不審な行動やリスクの兆候を検出できます。深夜時間帯のファイル持ち出しや、大量の顧客データの移動といった行為は、内部不正の可能性が高く、早期に把握することが重要です。
さらに、万が一情報漏洩が発生した場合でも、『Eye“247” Work Smart Cloud』で取得されたデータは、調査や証跡としての活用が可能です。
グローバル対応の労務管理支援
テレワークや海外拠点など、オフショア開発特有の分散型勤務にも対応。操作ログをもとにした客観的な労働時間の把握が可能となり、ガバナンス強化や法令遵守の面でも有効な手段となります。
「勤怠乖離チェック」機能により、ひと目で実際の労働時間と打刻データとの乖離が分かります。
コミュニケーション不足を補完
オフショア開発において、コミュニケーション不足が大きな課題となっています。『Eye“247” Work Smart Cloud』では、日報/月報の機能により、コミュニケーション不足を補うこともできます。
日報/月報では、グラフで一日の働き方を定量的に分析し、その日の働きを可視化することが可能です。データをもとに業務報告として日報/月報を利用することもでき、フィードバックも可能なので、コミュニケーション不足を補うことが出来ます。
■まとめ:課題を見据えた準備と管理でオフショア開発を成功に導く
オフショア開発はコストや人材面でのメリットがある一方、コミュニケーションや品質、セキュリティなど多くの課題を抱えています。
成功の鍵は、事前の綿密な準備と継続的な管理体制の構築です。信頼できるパートナーの選定、明確な要件共有、進捗可視化ツールの活用を通じて、オフショア開発を企業成長の強力な武器にしましょう。
この記事のポイント
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