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IPO準備とは?内部統制・開示体制・人材強化まで、経営者が押さえるべき全知識

  • FuvaBrain
  • 8月18日
  • 読了時間: 13分

更新日:2025年8月18日

IPO準備とは?内部統制・開示体制・人材強化まで、経営者が押さえるべき全知識

自社を上場させる──それは単なる資金調達手段ではなく、経営者にとって企業の信頼性・透明性・成長性を社会に示す重大な挑戦です。


この記事では「IPO準備とは何か?」という基本から、内部統制やガバナンス、資本政策、IT活用といった実務的な視点まで、経営層が押さえるべき要素を体系的に解説します。中小企業から大手企業まで、IPOを見据えた経営判断をサポートするための実践ガイドとして、ぜひお役立てください。

目次


■ IPO準備とは?基本の定義と全体スケジュール


IPO準備とは、企業が株式を公開(上場)するために必要な体制整備・制度設計・内部統制構築・情報開示対応などを行う一連のプロセスを指します。単なる書類提出や監査対応ではなく、企業として「社会の公器」になるための本質的な組織改革が求められます。

IPO準備の全体像は以下のようなステップで構成されており、完了までには一般的に2~3年程度かかるのが通例です。


IPO準備の目的

IPO準備の最大の目的は、企業が株式市場で公正かつ透明な経営を行い、投資家や社会からの信頼を獲得することです。上場企業として求められる基準を満たすためには、財務の透明性や内部統制の強化、ガバナンス体制の確立、適切な情報開示など、さまざまな観点から自社の経営基盤を強化する必要があります。

また、IPO準備を通じて経営管理体制や業務プロセスを見直すことで、企業価値の向上や成長の加速にもつながります。IPOは単なる資金調達手段ではなく、企業の持続的成長と社会的信用を高めるための重要なステップです。


IPO準備でやること・主な内容

IPO準備で企業がやるべきことは、上場審査に合格するための体制整備と、上場後も持続的に成長できる経営基盤の構築です。以下に、一般的なIPO準備項目を7つの主要カテゴリに分けて整理します。


経営戦略・中期計画の策定

IPO後の持続的な成長を見据え、3〜5年先を見通した中期経営計画を策定します。事業の成長戦略や財務目標、KPI(重要業績評価指標)を明確にすることで、社内外への説明責任を果たせる体制を構築します。


資本政策の立案

上場に向けて、現在の株主構成の見直しを行い、適正な比率での設計を進めます。特にVC(ベンチャーキャピタル)や創業者の持株比率が審査に影響するため、慎重な調整が必要です。また、ストックオプション制度の整備や、将来的な資金調達戦略の立案もこの段階で行います。


内部統制(J-SOX)構築

業務フローや承認権限を明確にし、社内規程を整備することで、J-SOX法(日本版SOX法)への対応を進めます。また、各業務プロセスにおける記録(証跡)を残す体制を構築し、不正防止・説明責任の根拠となる仕組みを整えます。


財務・会計体制の強化

上場基準に対応した会計処理ができる体制を構築します。具体的には、監査法人を選定し、ショートレビューを受けることから始め、月次決算の早期化・正確化を図ります。必要に応じて、会計基準を上場基準(J-GAAP、IFRS、US-GAAP)へと整備していきます。


情報開示体制の構築

新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)など、上場企業として求められる法定開示書類の作成準備を進めます。また、株主や投資家への適時開示が適切に行えるよう、社内に開示フローを整備し、IR体制の基盤を築きます。


ガバナンス・コンプライアンス対応

社外取締役の選任や監査役会、報酬委員会などの設置を通じて、上場企業にふさわしいコーポレート・ガバナンス体制を整備します。同時に、反社会的勢力との関係排除や、関連当事者取引の適正化など、コンプライアンス面の整備も求められます。


管理部門・人材の強化

IPO準備は経理、法務、人事、内部監査といった管理部門の負荷が大きくなるため、専門人材の採用や育成が不可欠です。また、IPO推進チームなどプロジェクト体制を整備し、社内の役割分担を明確にすることで、準備作業を効率的に進められる体制を構築します。


IPO準備の全体スケジュール

フェーズ

期間の目安

主な取り組み内容

事前準備期

上場2〜3年前

  • 中長期経営計画の策定

  • 資本政策の検討

  • 管理部門体制の見直し

準備本格化期

上場2年前〜1年前

  • 監査法人の選定・ショートレビュー

  • 内部統制の構築(J-SOX)

  • 社内規程整備

直前期(申請前)

上場1年前〜6ヶ月前

  • Ⅰの部等の作成

  • 主幹事証券との協議

  • 審査対応

申請〜上場期

上場6ヶ月前〜直前

  • 証券審査対応

  • 社内外向け説明資料の作成

  • ロードショー(投資家説明会)



■内部統制(J‑SOX)の整備とガバナンス強化の要点


IPO準備において最も重要なポイントの一つが、内部統制(J-SOX)とガバナンス体制の整備です。J-SOX(金融商品取引法に基づく内部統制報告制度)は、上場企業に求められる内部統制の基準を定めており、財務報告の信頼性を確保するための仕組みが必要です。

また、ガバナンス強化は、経営の透明性や意思決定の公正性を担保し、社内外のステークホルダーからの信頼を高めるために不可欠です。これらの体制整備は、監査法人や証券取引所からの審査にも直結するため、早期から着手し、継続的に改善していくことが求められます。


J-SOXが求める内部統制

J-SOXで要求される内部統制は、「統制環境」「リスクの評価と対応」「統制活動」「情報と伝達」「モニタリング」の5つの要素から成り立ちます。

これらをバランスよく整備し、実際に運用できているかを継続的に評価・改善することが重要です。 現状の業務フローや組織体制を見直し、証跡管理や職務分掌、承認プロセスの明確化など、実務レベルでの統制強化が求められます。

構成要素

概要

統制環境

経営理念や組織風土、倫理観の醸成

リスクの評価と対応

リスクの特定・評価・対応策の策定

統制活動

業務手続きや承認フローの整備

情報と伝達

必要な情報の共有・伝達体制

モニタリング

内部監査や自己点検による継続的評価


ガバナンス強化

ガバナンス強化のためには、経営陣のリーダーシップと透明性の高い意思決定プロセスが不可欠です。取締役会や監査役会の機能を強化し、社外取締役の登用やコンプライアンス委員会の設置など、外部の視点を取り入れることも有効です。

また、リスク管理体制や内部通報制度の整備、経営層と現場のコミュニケーション活性化も重要なアクションとなります。これらの取り組みを通じて、企業全体のガバナンスレベルを引き上げ、IPO審査に耐えうる体制を構築しましょう。



■ショートレビュー・監査法人の選定ステップ


IPO準備において最初に着手すべき重要な工程の一つが、監査法人の選定とショートレビューの実施です。上場審査では、上場前2期分の財務諸表が適切に監査されている必要があるため、できる限り早期に監査体制を確立することが成功のカギとなります。


ショートレビューとは

ショートレビューとは、IPO準備の初期段階で実施される、監査法人による簡易的な事前調査です。このレビューを通じて、現時点での課題や改善点を洗い出し、IPO本番に向けてどのような対応が必要かを明確にします。

ショートレビューの結果は、今後の体制整備やスケジュール策定の指針となるため、IPO準備のスタート時に必ず実施すべき重要な工程です。


監査法人の選定ステップ

監査法人の選定は、単に知名度や費用の安さで決めるのではなく、企業フェーズやIPOスケジュール、事業内容に合ったパートナー選びが重要です。


  1. 候補法人のリストアップと面談

  2. 業務範囲・報酬の提案依頼

  3. ショートレビューの依頼と実施

  4. 正式な監査契約の締結



■資本政策と開示体制の整備


IPO準備において、資本政策と開示体制の整備は、企業の成長戦略と投資家との信頼関係を築くうえで欠かせない要素です。適切な資本構成は安定した経営基盤をつくり、正確でタイムリーな情報開示体制は上場企業としての社会的責任を果たす土台となります。


資本政策とは

資本政策とは、企業の株主構成・株式数・発行タイミングなどを計画的に設計することを指します。IPOでは、投資家・既存株主・創業メンバーの利害が複雑に絡むため、上場前に透明性の高い設計が求められます。 また、資本政策は上場審査でも重視されるポイントであり、将来的なM&Aや事業拡大も見据えた柔軟な設計が求められます。資本政策の失敗は、経営権の分散や資金調達の失敗につながるため、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めましょう。


開示体制とは

開示体制とは、企業が投資家や市場に対して、正確かつタイムリーに経営情報や財務情報を開示するための仕組みを指します。IPO準備段階では、決算や有価証券報告書、適時開示資料などの作成・提出体制を整備し、情報の正確性や一貫性を担保することが求められます。

また、開示体制の整備は、上場審査やIR活動の信頼性向上にも直結します。社内の情報伝達フローや承認プロセスを明確にし、開示資料の裏付けとなる証跡管理も徹底しましょう。



■経営管理体制と管理部門の人員強化


IPO準備とは、単に開示資料や監査対応を進めるだけでなく、企業の“中枢”である経営管理体制を再設計するプロセスでもあります。経理・法務・人事・情報システムといった管理部門は、上場に向けて大幅な業務量の増加に直面するため、体制構築と人員強化が不可欠です。


経営管理体制を見直すべき理由

経営管理体制を見直す理由は、IPO審査や上場後の持続的成長に耐えうる組織基盤を構築するためです。上場企業には、迅速かつ正確な意思決定、リスク管理、情報開示、内部統制など、多岐にわたる高度な経営管理が求められます。現状の体制では対応が難しい場合、組織再編や権限委譲、業務の標準化などを進める必要があります。


管理部門に求められる役割と人員整備方針

管理部門には、財務報告の正確性確保、内部統制の運用、開示資料の作成、法令遵守、リスク管理など多岐にわたる役割が求められます。IPO準備段階では、これらの業務を安定的に遂行できる体制を整えるため、必要な人員を計画的に配置し、専門性の高い人材を採用・育成することが重要です。

また、業務の属人化を防ぐために、ツール導入、マニュアル整備、業務分担の明確化も進めましょう。



■ITシステム・証跡管理による業務効率化


IPO準備では、ITシステムの導入や証跡管理の徹底による業務効率化も重要なテーマです。膨大な書類や証憑の管理、開示資料の作成、内部統制の運用など、手作業ではミスや漏れが発生しやすくなります。ITシステムを活用することで、業務の標準化や自動化、証跡の一元管理が可能となり、監査対応や開示資料作成の効率が大幅に向上します。

また、クラウドサービスの活用により、リモートワークや多拠点展開にも柔軟に対応できる体制を構築できます。


なぜ証跡管理がIPO準備に必要なのか

証跡管理は、IPO準備において非常に重要な役割を果たします。 業務ログや操作履歴の記録は、内部統制が「運用されている」証明となります。また、タスク管理・文書管理のシステム導入により、準備作業の効率化・標準化が実現します。証跡が適切に管理されていないと、監査対応が遅れ、開示資料の裏付けが不十分となり、IPO審査に大きな支障をきたします。




■IPO準備企業のよくある失敗と成功のポイント

IPO準備企業のよくある失敗と成功のポイント

IPO準備は多岐にわたる業務が並行して進むため、計画性や体制整備が不十分だとさまざまな失敗に陥りやすくなります。一方で、成功企業には共通するポイントが存在します。

ここでは、IPO準備企業が陥りがちな失敗事例と、成功企業の特徴について具体的に解説します。自社の準備状況を客観的に見直し、失敗を回避しながら成功に近づくためのヒントを得ましょう。


企業が陥りがちなIPO準備の失敗

IPO準備では、体制や業務プロセスの不備、スケジュール管理の甘さ、証跡管理の欠如など、さまざまな失敗が発生しがちです。これらの失敗は、監査対応の遅延や審査の不合格、管理部門の疲弊など、IPOプロジェクト全体に大きな影響を及ぼします。以下は失敗パターンの一例を表にまとめています。

失敗パターン

内容

属人化と証跡管理の欠如で監査対応に支障

担当者依存の業務設計により、必要な記録が残らず審査に対応できなかった例

スケジュール管理の甘さが全社に波及

全体の工程管理が不十分で、重要な提出物が間に合わなかったケース

関係者対応の履歴が残っておらず、信頼を損なう

証券会社や監査法人とのやり取りが属人化し、同じ指摘が繰り返され評価低下に繋がった例

管理部門への過重負荷が続き退職者が発生

特定部門への業務集中により、退職や体調不良を招いた事例


成功企業の共通点

IPOに成功した企業には、いくつかの共通点があります。まず、経営層が主導して全社一丸となった体制を構築し、計画的かつ着実に準備を進めている点が挙げられます。また、ITシステムや外部専門家を積極的に活用し、業務効率化とリスク管理を両立させていることも特徴です。さらに、証跡管理や情報開示の徹底、管理部門の人員強化など、審査基準を意識した体制整備を早期から実施しています。


  • 経営層主導の全社プロジェクト化

  • ITツールによるタスク可視化

  • 全社で役割分担の明確化

  • 関係者連携履歴の蓄積・活用



■Eye“247” Work Smart Cloudで叶えるIPO準備


IPO準備では、内部不正対策としてのガバナンス強化・証跡の確保・人材リソースの最適化が不可欠です。IPO準備を効率的かつ確実に進めるためには、クラウド型ログ管理・業務可視化システムの活用が有効です。

Eye“247” Work Smart Cloud』は、こうしたニーズに応えるクラウド型ログ管理・業務可視化ツールとして、多くの上場準備企業に導入されています。


ガバナンス強化に有効な証跡管理

『Eye“247” Work Smart Cloud』は、内部不正対策としてのガバナンス強化に必要な業務プロセスの整備や証跡管理に役立ちます。PC操作ログ、ファイル操作履歴、USB利用履歴、Wi-Fi接続履歴などを記録し、ガバナンスに必要な証跡を自動で確保します。これらの記録は長期保管が可能で、ガバナンスにおける説明責任を果たしやすくなります。



労務管理・人材リソースの最適化に貢献

『Eye“247” Work Smart Cloud』では、日々の作業時間や従業員の負担を可視化できます。これにより、自動化が可能な業務や無駄な業務を特定し、人材リソースの最適化に活用できます。また、過重労働の防止やプロジェクト進捗管理にも有効です。

さらに、「勤怠乖離チェック」機能を使えば、勤怠記録と実働時間の差異を客観的なデータとして一目で把握でき、労務リスクの予防や労務管理の信頼性の高い説明根拠としても活用できます。




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■まとめ:経営者がIPO準備で押さえるべき知識とステップ


IPO準備とは、上場審査に耐えうる制度整備にとどまらず、企業体質の根本改革です。特に、業務の可視化と記録性は「審査に通る企業」から「信頼され続ける企業」へ成長するための鍵となります。『Eye“247” Work Smart Cloud』を導入することで、IPO審査にも強い体制を構築できます。

この記事のポイント

  • IPO準備とは、株式上場に向けた全社的な体制整備と業務改革を伴うプロセス

  • J-SOXに準拠した内部統制やガバナンス強化が審査の重要ポイント

  • 資本政策や開示体制の整備により、投資家への信頼性と透明性を確保

  • 管理部門の体制・人員強化とITによる業務の見える化が成功のカギ

  • 『Eye“247” Work Smart Cloud』を活用すれば、証跡管理や業務効率化が実現可能


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