2026年の労働基準法改正で何が変わる?ポイント一覧と企業の対応チェックリスト
- FuvaBrain
- 12月16日
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更新日:12月24日
更新日:2025年12月16日

2026年、日本の「働き方」の根幹を支える労働基準法が、約40年ぶりの大規模な改正を迎える見通しです。今回検討されている改正は、単なる法律のアップデートにとどまらず、企業に対し、労働時間管理・休日設定・多様な働き方への対応における抜本的な変革を迫るものとなります。特に、テレワークや副業が一般化した現代において、管理職・人事労務担当者・DX推進を担う社内SEの皆様にとって、緊急性の高い経営課題となります。
この記事では、2026年労働基準法改正で検討されている最重要ポイントを解説し、企業が直面する具体的なリスク、そしていつまでに何をすべきかを明確なチェックリストとともにお伝えします。
改正内容を正しく理解し、対応を円滑に進めるためのガイドとしてご参考ください。
※本内容は、今現在検討されている改正案を前提としております。今後、内容が変更される可能性もあり、厚生労働省等の発表を必ずご確認ください。
目次
「過重労働防止」のための連続勤務・休日・インターバル制度の義務化
「つながらない権利」のガイドラインと有給賃金算定ルールの原則化
副業・兼業者の労働時間通算見直しと特例措置の廃止
人件費増加の可能性と割増賃金計算の厳格化
法定休日・連勤規制違反によるコンプライアンスリスクと罰則
テレワーク環境での「つながらない権利」と労務管理の難しさ
【Step1:現状分析】課題洗い出しと影響度評価
【Step2:制度設計】就業規則の改訂方針と関連部署との連携
【Step3:システム対応】勤怠・給与システムの改修と導入完了
【Step4:周知と定着】従業員・管理職への教育徹底と運用チェック
必須!就業規則・雇用契約書の「休日・休暇」関連改訂チェック項目
勤怠管理システムに求められる法改正対応機能
労務管理体制における「つながらない権利」対応規定例
労働基準法改正対応を強力にサポートする『Eye“247” Work Smart Cloud』
客観的なPCログで「隠れ残業」と「つながらない権利」リスクを解消
多様な働き方とコンプライアンス遵守を両立する運用サポート機能
労務管理と同時に実現するセキュリティ・情報漏洩対策
■ 2026年労働基準法改正のポイント一覧
今回の改正案(労働基準関係法制研究会報告書等に基づく)の核となるのは、「従業員の健康確保」と「多様な働き方への対応」です。
特に企業への影響が大きい7つの改正点を、テーマ別に分かりやすく整理します。
※参考・出典
労働基準関係法制研究会報告書:https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001370269.pdf
「過重労働防止」のための連続勤務・休日・インターバル制度の義務化
2026年改正の中心になるのは、過重労働防止を目的とした連続勤務の上限規制と勤務間インターバル制度の義務化です。長時間労働を物理的に抑制し、従業員の健康を確保するための、厳格化されるルールです。
連続勤務の上限規制(14日以上連続勤務の禁止):
現行法で認められていた「4週4日」の変形週休制の特例が見直され、「2週2日」を基本とする見直しが行われ、14日以上の連続勤務が禁止されます。これは、シフト勤務や変形労働時間制を採用する製造業・小売業・医療・介護などの企業に大きな影響を与えます。
法定休日の明確な特定義務:
これまで不明確だった「法定休日」(週1回または4週4日)について、事前に特定する義務が企業に課されます。これにより、シフト表や就業規則において、どの曜日・日が法定休日であるかを明確に示す必要があり、休日労働の割増賃金計算が厳格化されます。
勤務間インターバル制度の義務化:
終業時刻から次の始業時刻までに、一定時間(原則11時間)の休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」の義務化が検討されています。従業員が十分な生活時間や睡眠時間を確保できるよう、勤務終了後、次の勤務開始まで11時間以上の休息時間を設ける必要があります。深夜勤務や交代制勤務を行う企業は、シフトや業務分担を根本的に見直しましょう。
「つながらない権利」のガイドラインと有給賃金算定ルールの原則化
テレワークや在宅勤務の普及に伴い、勤務時間外の業務連絡や指示が問題視されています。
2026年改正では、勤務時間外に業務連絡を受けない「つながらない権利」のガイドライン策定が検討され、企業は従業員のプライベート時間を尊重する運用が求められます。
「つながらない権利」に関するガイドラインの策定:
休日・休暇中に、上司や会社からのメール、チャット、電話への応答を拒否できる権利に関するガイドラインが策定される見通しです。これにより、管理職は時間外の業務指示を原則控える必要があり、労務管理の意識改革が求められます。
有給休暇の賃金算定における通常賃金方式の原則化:
有給休暇を取得した際の賃金算定方法として、「通常賃金方式」(通常通り勤務した場合の賃金)を原則とすることが明確化されます。これは、特に日給・時給制のパート・アルバイトが多い企業において、賃金計算ルールの見直しが必要になります。
副業・兼業者の労働時間通算見直しと特例措置の廃止
副業・兼業が一般化する中、2026年改正では複数の雇用主で働く従業員の労働時間通算ルールが見直されます。さらに、法定労働時間週44時間の特例措置は廃止の報告性が示されています。
副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直し:
複数の会社で働く副業・兼業者の労働時間について、割増賃金算定の通算ルールが見直され、簡素化されます。企業側の管理負担軽減が期待されますが、従業員からの正確な労働時間申告の仕組みの構築が不可欠となります。
法定労働時間週44時間の特例措置の廃止:
一部の小規模な商業、サービス業、病院など特定の業種に認められていた「週44時間」の特例が廃止され、すべての事業場において原則「週40時間」が適用される見通しです。これにより、該当する企業はシフトや人員配置の根本的な見直しが必要です。
■ 改正法が企業にもたらす具体的な影響とリスク
今回の改正は単なる文言修正ではなく、企業経営に直結する重要要素を含んでいます。特に、労務運用・人件費・労務コンプライアンス・テレワーク管理など、複数の課題が連動し、早期の準備が必要になります。
人件費増加の可能性と割増賃金計算の厳格化
連続勤務の上限規制や勤務間インターバル制度の義務化により、シフト調整や人員配置の見直しが必要となります。これに伴い、追加の人員確保や割増賃金の支払いが増加する可能性が高まります。
また、割増賃金計算は厳密な運用が求められるため、計算ミスや未払いが発生すると重大な法令違反となり、企業の信頼低下や損害賠償リスクにつながります。手作業やExcel計算では限界があるため、給与計算システムの改修が不可避です。
法定休日・連勤規制違反によるコンプライアンスリスクと罰則
最も深刻なのは、改正後のルールに自動的に違反してしまうリスクです。
法定休日の特定義務や連続勤務14日以上の禁止に違反した場合、企業は行政指導や罰則の対象となります。特に、労働基準監督署による調査や是正勧告が強化される見込みです。違反が発覚した場合、企業が公表される場合があり、社会的信用の失墜につながる恐れがあります。また、従業員からの訴訟リスクも高まるため、コンプライアンス体制の強化と定期的な運用チェックが重要です。
テレワーク環境での「つながらない権利」と労務管理の難しさ
テレワークや在宅勤務が普及する中、勤務時間外の業務連絡や指示が常態化しやすくなっています。2026年改正で「つながらない権利」がガイドライン化されることで、企業は従業員のプライベート時間を守るための運用ルールを明確にしなければなりません。しかし、実際の労務管理や勤怠把握は難易度が高く、勤務時間外に連絡を取る行為が常態化している企業では、「つながらない権利」ガイドラインの策定後も慣習を変えられず、管理職が意図せず法に抵触するリスクが高まります。そのため、システムや運用ルールの整備が不可欠です。従業員の健康確保と業務効率の両立が求められます。
■ 企業が取るべき具体的な対応ステップとスケジュール
2026年の施行に間に合わせるため、企業は今から何をすべきでしょうか。具体的な対応を4つのステップに分けて解説します。
【Step1:現状分析】課題洗い出しと影響度評価
最初に行うべきは、自社の現状と法改正のギャップ分析です。
まずは自社の現行制度や運用状況を徹底的に分析し、改正法がどの部分に影響を与えるかを洗い出します。連続勤務や休日管理、インターバル運用、副業・兼業者の管理状況など、現場の実態を把握することが重要です。課題を明確にすることで、優先的に対応すべきポイントやリスクを特定できます。
自社の現行ルールの棚卸し: 就業規則、賃金規程、シフト作成ルール、副業規程が改正法に照らしてどこに不備があるかを洗い出します。
影響部署の特定: 連続勤務が多い部署(製造、販売、システム保守)、副業者が多い部署、テレワークが中心の部署など、特に影響を受ける部門を特定し、ヒアリングを開始します。
システム依存度の評価: 勤怠システムが法定休日の特定、連続勤務日数、勤務間インターバルなどの自動チェック機能を有しているかを確認します。
【Step2:制度設計】就業規則の改訂方針と関連部署との連携
分析結果に基づき、具体的なルール(就業規則や雇用契約書の改訂方針)を設計します。
人事・労務部門だけでなく、現場管理職やIT部門、法務部門とも連携し、実効性のある制度設計を目指しましょう。改正内容を反映したルール作りと、現場で運用可能な仕組みの構築がポイントです。
就業規則・雇用契約書の改訂案作成
関連部署との協議・調整
現場運用を考慮した制度設計
【Step3:システム対応】勤怠・給与システムの改修と導入完了
システム対応は時間とコストがかかるため、早期に着手が必要です。
連続勤務やインターバル管理、割増賃金計算の自動化、副業・兼業者の労働時間通算機能など、必要な機能を洗い出し、システムベンダーと連携して早期に導入を進めましょう。システムテストや現場での運用確認も重要です。
【Step4:周知と定着】従業員・管理職への教育徹底と運用チェック
ルール変更は、現場で運用されて初めて意味を持ちます。
制度やシステムを整備した後は、従業員や管理職への周知・教育が不可欠です。新ルールの説明会やマニュアル配布、Q&A対応などを通じて、現場での理解と定着を図りましょう。また、運用開始後も定期的なチェックやフィードバックを行い、問題点を早期に発見・改善する体制を整えましょう。
■ 就業規則・勤怠システムの見直し徹底チェックリスト
実務担当者が「何を」「どのように」見直すべきかを具体的に示したチェックリストです。
以下の項目を基準に、自社整備状況を視覚的に確認してください。
必須!就業規則・雇用契約書の「休日・休暇」関連改訂チェック項目
チェック項目 | 見直しが必要な理由 | 規定例(注釈) |
法定休日の特定 | 特定義務化に対応するため。 | 「法定休日は原則として日曜日とする。ただし、やむを得ない場合は事前に特定の曜日に振り替えることができるものとする。」 |
連続勤務の上限明記 | 14日以上の連勤禁止に対応するため。 | 「従業員の連続勤務は13日を上限とし、14日以上の連続勤務は原則として禁止する。」 |
勤務間インターバル規定 | 義務化に対応するため。 | 「終業から次の始業まで、〇〇時間を下回らない休息時間を確保するものとする。」 |
有給休暇の賃金算定 | 通常賃金方式の原則化に対応するため。 | 「有給休暇期間中の賃金は、労働基準法第十二条に基づく通常の賃金を支払うものとする。」 |
勤怠管理システムに求められる法改正対応機能
ITシステムは、手作業によるミスを防ぎ、コンプライアンスを担保する「生命線」となります。
法改正対応機能 | 目的となる改正項目 | システムの具体的な役割 |
連勤アラート機能 | 連続勤務の上限規制 | 連続勤務が13日に達する前に、管理者と本人に自動で警告を通知し、法令違反を未然に防ぎます。 |
勤務間インターバル自動チェック | 勤務間インターバル制度の義務化 | シフト入力時や打刻時にインターバル不足を自動で検知・警告し、入力をブロックすることで、休息時間を確実に確保します。 |
副業・兼業の労働時間通算機能 | 副業・兼業者の労働時間通算ルールの見直し | 従業員からの他社労働時間の申告に基づき、自社の労働時間と合算して正確な割増賃金率を適用計算します。 |
PCログ連携(客観的把握) | 客観的な労働時間の把握義務、つながらない権利ガイドライン | 打刻時刻とPCの起動・操作ログを比較し、サービス残業や不正打刻の有無を自動でチェックします。 |
労務管理体制における「つながらない権利」対応規定例
「つながらない権利」ガイドラインに対応するため、就業規則や情報セキュリティポリシーに定めるべき具体的な規定の例を以下に示します。
規定の柱 | 規定例 | 目的・意図 |
連絡原則の制限 | 勤務時間外および休日に、業務に関するメール、チャット、電話を原則として行わないこと。 | 勤務時間外の業務指示を原則禁止し、従業員の私生活と健康を確保します。 |
緊急連絡ルートの明示 | やむを得ない緊急事態に限り、特定の連絡手段(例:緊急ホットライン、当番管理者への電話)のみを許可すること。 | 法的なリスクを回避しつつ、業務上の緊急事態への対応体制を確保します。 |
管理職の免責事項 | 勤務時間外に届いた連絡に対し、従業員が応答しなかったことを理由に不利益な扱いをしないこと。 | 従業員が安心して権利を行使できるよう、管理職による不当な評価や圧力を防ぎます。 |
■ 労働基準法改正対応を強力にサポートする『Eye“247” Work Smart Cloud』
2026年の労基法改正に対応するには、制度設計と同じかそれ以上に「実態把握と運用改善」を実現する仕組みが求められます。『Eye“247” Work Smart Cloud』は、PC操作ログと勤怠データを突合し、勤務実態の可視化と労務リスク低減を同時に実現できるクラウドサービスです。
ここでは、同システムの主な特長と活用メリットを紹介します。
客観的なPCログで「隠れ残業」と「つながらない権利」リスクを解消
『Eye“247” Work Smart Cloud』の最大の特徴は、PC操作ログの自動収集です。これにより、自己申告に依存しない、信頼性の高い労働時間データを得られます。
「勤怠乖離チェック」機能では、PCログと打刻情報を突合し、実労働時間と勤怠情報の乖離が発生した場合は管理者にアラートを通知。従業員のワークライフバランスを守り、企業の法令遵守を強力にサポートします。
これにより、隠れ残業や勤務外労働の兆候を早期に把握し、つながらない権利の侵害を未然に防ぎます。
多様な働き方とコンプライアンス遵守を両立する運用サポート機能
出社・テレワーク・フルリモートなど、従業員の場所を問わず、多様な勤務形態を統一指標で管理できます。グローバルな働き方やリモートワーク環境における労務管理を簡素化します。勤務実態を見える化することで、労務管理と統制を強化しながら、生産性向上と柔軟な働き方の推進の両立が可能です。
労務管理と同時に実現するセキュリティ・情報漏洩対策
『Eye“247” Work Smart Cloud』は、業務労務管理機能だけでなく、セキュリティ機能も兼ね備えている点が大きな差別化要素です。
法改正対応を機に、情報漏洩の原因となるUSB接続やファイル操作の履歴監視、不審なWebサイトへのアクセス制限などを同時に実現でき、内部統制の強化に役立ちます。監査対応などに効果を発揮します。従業員PCのOSバージョンやソフトウェア利用状況も把握できるため、情報システム部門のIT資産管理業務も効率化します。これにより、労務・DX・セキュリティの課題を一元的に解決することが可能となります。
■ まとめ:改正を機に働き方と管理体制をアップデートする
2026年の労働基準法改正は、企業にとって大きな転換点となります。
法令遵守はもちろん、従業員の健康やワークライフバランスを守るためにも、就業規則や勤怠システムの見直し、現場への周知徹底が不可欠です。さらに、制度を形骸化させず実務運用へ落とし込むためには、勤務実態を正確に把握し、継続的に改善できる仕組みを備えることが重要です。
そのため、勤怠情報とPCログを自動突合し、乖離を即時検知できる『Eye“247” Work Smart Cloud』の導入をおすすめします。改正対応のための機能を標準搭載しており、労働時間管理・テレワーク管理・副業者管理・内部統制をワンプラットフォームで実現します。"手作業や感覚的運用からの脱却"は、改正対応だけでなく、企業の持続的な成長にも直結します。
この記事のポイント
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